大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

広島高等裁判所 昭和30年(う)313号 判決

この点につき当審において調査した結果によると、右は畢竟その間原審の担当裁判官が判決書作成のため記録を保管していたことに因るものであることが認められ、他にかく長期にわたり本件記録を送付できなかつた特段の事由があつたことを認めるに足る資料がない。してみると、裁判の迅速に行われたかどうかは事案の性格内容証拠調の多寡その他審理の経過等諸般の事情を検討してこれを決すべきは勿論であつて、本件をこの観点から考察すると、遺憾ながら、本件裁判は全体として迅速を欠く結果を招来し、所論指摘の如く憲法第三七条第一項の要請に背反するものといわざるを得ない。しかしながら、現行刑事訴訟法はその第三三八条第三三九条により公訴棄却の裁判をなすべき場合を形式的訴訟条件の欠缺を理由に公訴を不適法として事件を終結させる形式的終局裁判に限定して規定し、裁判が迅速を欠き憲法第三七条第一項に違反する場合公訴棄却の裁判をすべきものとする特別の規定をしないから、叙上の憲法違反があることを理由に本件公訴を棄却する裁判を求める所論は採用できない。且つまた、右の憲法違反ありとするも、これにより係官の責任をとわれることあるは格別、これが判決に影響を及ぼさないことは明らかであるから、該憲法違反は原判決破棄の理由とはなし難い。論旨は理由なきに帰する。

(裁判長判事 柴原八一 判事 尾坂貞治 判事 池田章)

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